医学翻訳をするには、基本的な医学の専門知識が必要になる。これから2記事にわたって紹介するサイトは、医学翻訳で使う医学情報を掲載している(参考:翻訳学校のテキスト内容)。
医学といっても翻訳で使う範囲は幅広いので、「医学の全体像&その知識」を把握するのに参考になるだろう。
これから医学翻訳を学ぶ人はこれらのサイトの内容を見て知っておけば、知らないよりは確実に役立つ。
医学の全体像&目次
目次(この記事)
1.癌
2.臨床系-消化器
3.臨床系-循環器
4.臨床系-外科学
5.臨床系-脳
6.生化学
7.免疫学
目次(次の記事)
8.遺伝子治療
9.医薬品-抗がん剤
10.医薬品-抗生物質
11.新薬の申請
12.医療機器
上記の範囲が医学翻訳で使う大まかな医学の範囲だ。もちろん本番の翻訳ではもっと細かな知識を扱う。なので、その都度別の知識を調べることが必要だが、ほとんどは上のカテゴリーの範囲内にある。
この記事で掲載している情報を一通り見て学べば、医学翻訳の範囲内の基本的な医学知識はつくだろう。
1.癌
ガンは日本人の死因を占める病気の第一位で、その割合は年々増加しており、関連情報も腫瘍を中心にドンドン増えている。基本的にはガンは良性腫瘍と悪性腫瘍に大きく分かれ、そこから枝分かれ的に細かくなっている分野。
癌の仕組みから基礎まで
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/knowledge/basic.htmlganjoho.jp癌はどんな症状なのか、症状手術、良性腫瘍と悪性腫瘍の違いなど癌に関する基礎的な知識をがわかりやすい。
【サイト検索ワード】癌 良性 悪性基礎知識
癌の腫瘍マーカー
癌における腫瘍マーカーの役割とその種類を紹介。腫瘍マーカーが検査でどのような役割を果たすかも紹介されている。腫瘍マーカーの役割を抑えるくらいに読むくらいでいいと思う。
【サイト検索ワード】癌 腫瘍マーカー
癌の国際的な分類表
癌は種類や症状など、多様な要因によって分類される。それは国際的に決まっているため翻訳でも重要な知識で、このサイトではそれが詳しくわかる
【サイト検索ワード】癌 TNN分類 p r
2.消化器
消化器(英語: digestive organ, digestive apparatus)は食物の摂取から、貯蔵と消化、栄養素の吸収、排泄、といった働きを担う器官をまとめた総称。図で見てわかるように口から胃、肛門付近の臓器をさして言う。知識範囲は神経系などの臓器の仕組みから主な病気まで。
交感神経と副交感神経
www.jiritunavi.com消化器系における交感神経と副交感神経の働きをストレスとの関係からわかりやすくまとめた記事。かなり読みやすい
【サイト検索ワード】消化器 交感神経
迷走神経
自律神経系の症状である迷走神経反射について。自律神経系のことや、その症状も詳しくわかる。
【サイト検索ワード】消化器 迷走神経
過敏性腸症候群
消化器系の代表的な病気である過敏性腸症候群(IBS)の仕組みを詳しく説明。
【サイト検索ワード】消化器 過敏性腸症候群 ROME2
3.循環器
循環器(英: Circulation, circulatory organ)血液やリンパ液などの体液を輸送し、循環させる働きをする。ほとんどが血管で、血液を循環させる”血管系”、リンパ液を循環させる”リンパ系”がある。生体機能に必要な酸素や血液を運ぶ働きがある。範囲は血管と心臓などの循環器の仕組みから関連研究まで。
動脈硬化と血管断面図
血管の断面図とそれに加えて、動脈硬化という血管の主な病気について
【サイト検索ワード】血管断面図 正常動脈
心臓の仕組み
心臓の機能や名称、仕組みをコンパクトにまとめてある。
【サイト検索ワード】心臓 右肝動脈 右心室 右心房 冠状動脈
フランミンガム研究の医学論文
・フラミンガム研究は「心血管病の原因を探るための長期の疫学研究」のこと
・BMI(ボディー・マス・インデックス)は、体重と身長の関係から人の肥満度を示す体格指数
フラミンガム研究の類似の論文でBMIがどのように使われているか、また翻訳のときにどんな風に訳したらいいかを参考にしたい。
【サイト検索ワード】フラミンガム研究 BMI
4.外科学
外科学(英: surgery)は、手術による手法を使う全ての分野を包括する基礎の学問。知識は外科手術の基本的な仕組み。多臓器不全
www.jlogos.com外科における最も多い手術の概要を通して、外科全般の知識を学べる。
【サイト検索ワード】外科 多臓器不全 臓器 機能 液性不全
外科医療の基本的な診断/検査用語
www.nyugan.jp外科手術の基本的な手法の用語解説。外科では頻繁に出て来るものに限定している。
【サイト検索ワード】外科 手術 生検
5.脳
脳科学とは、ヒトの脳の分野。知識範囲は脳の仕組み。脳の概要
kazoo04.hatenablog.comコンピュータ系のブログだが、脳の断面図から仕組みまで、1つのサイトでかなりコンパクトにまとめてある。結構楽しく読めので、堅苦しいテキストよりずっとコンパクト
【サイト検索ワード】臨床 前頭葉 小脳 間脳
6.生化学
生物化学と呼ばれることもあるが,生化学のほうが一般的。生物体を構成する物質や生体内に生じる化学物質、およびその化学反応の過程が対象。知識は生化学の基本的な物質から、医学用語まで。特に幅広いので、翻訳学校の紹介している知識を対象範囲とカウントした。
血管の働き
www.kango-roo.com血管の働きを説明しているが、メインの構成情報は生化学の基本的な用語や知識となっている。
【サイト検索ワード】生化学 血液凝固過程 血液凝固因子
コホート研究
オッズ比、相対危険度、信頼区間など生化学の研究における基本ワードがわかる。
信頼区間→標本の統計量を元に、母集団の平均などを、幅(区間)を持たせて推定し、この推定した幅を「信頼区間」と言います。
【サイト検索ワード】オッズ比 相対危険度 信頼区間
血液疾患
血液疾患は血液の病気。確認したい内容はヘパリン、ワルファリンやヘパリン起因性血小板減少症(HIT)など。生化学でメインとなるFOY、DICをはじめ、生化学に欠かせない情報はほとんどのっている。
ちなみにDICは疾患で「播種性血管内凝固」、FOYとは「メシル酸ガベキサート」のことでDICの治療薬。文中ではFOYと訳されてないので、注意したい。
【サイト検索ワード】生化学 肥満細胞 アンチトロンビン APTT
7.免疫学
免疫学(英語: immunology)は、生体の持つ免疫機能に関する分野。主に、基礎医学・歯学・薬学・生物学、臨床医学が対象。
抗体、B細胞、T細胞、リンパ球などの免疫学の基礎知識&用語が対象範囲。
免疫細胞
www.menekiplaza.comB細胞、T細胞、リンパ球、マクロファージなど免疫学の基礎知識がかなり詳しくわかる。
【サイト検索ワード】免疫系 B細胞 Tリンパ
抗原と抗体(感作、抗体の種類)
免疫学における抗原や抗体などの役割、働き、仕組みがわかる。
【サイト検索ワード】抗体 抗原
医学翻訳は医者並みの知識は要求されないが、医学翻訳における表現や基礎知識は必要になる。今回紹介したサイトは、翻訳学校のテキストを参考にしているので、医学翻訳の基礎的なカテゴリーの知識は網羅していると考えていい。
もちろん実務での本格的な翻訳のときはこれらの知識を土台に、さらに精密に調べる必要がある。しかし、土台の知識がある無いでは、翻訳スピードも全然違うし、文章の質も違ってくる。その意味でもここで紹介した範囲内の知識は必ず役に立つだろう。
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